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森本直樹

「自立」とは「依存先」を増やすことである

更新日:2023年1月10日



福岡から「教育をおもしろくする」というスローガンのもと、民間学童きりんアフタースクールを運営しています。

放課後の子どもたちの時間をいかに有意義にできるか、探究的な学びを届けられるか、みんなで頑張っています。


さて、新年最初のブログになります。明けましておめでとうございます。年末年始の私はというと、実家の鳥取県に帰省し、のんびりと家族で過ごしておりました。


皆さまはいかがお過ごしでしたか?


今日のブログは、最近知った考え方で子どもたちと関わる上で大切だなと思ったものをシェアさせていただきます。


障害を持ちながら生きる東京大学の研究者の熊谷晋一郎氏の記事リンクを添付しておきます。



記事では、コロナ社会の中で障害者から見た社会問題に言及されていますが、各ご家庭でのお子さまとの関わりにおいても転用できると思います。


親としての一番の願いは何か?


昨年11月に、次年度のきりんアフタースクールの入会説明会がありました。

その説明会の冒頭で私がお話した内容を少しご紹介します。


、、、



今、時代は急速に変化しています。子どもたちの身の周りには当たり前にYoutubeやTVゲームがあります。自分で何か楽しいことを創造しなくても、向こう側からやってくるエンタメをただ消費していれば満たされる時代です。


また、テクノロジーも急速に進化しています。私たちが普段当たり前に使っているiPhoneが登場したのは今から15年前です。


15年というと、これから小学1年生の子が仮に大学に行ったとしてちょうど社会に出る年月です。つまり、今の子どもたちが社会に出る頃には、今では存在しようなコトやモノが登場し、世の中の「当たり前」が変わってしまっていることは十分にあり得ます。


そんな時代を生き抜いていく子どもたちに親として願うことをあえて一つに絞るとしたら我が子の「自立」なのではないでしょうか。


どんな時代になったとしても自分の好きなことを見つけ、自分で生計を立てて生きていける。そんな子になってくれたらというのが願いでしょう。これは私も一人の親として同じです。


、、、


と、我が子の「自立」こそ親としての大きな願いであろうことをお伝えさせていただきました。



「自立」のために「依存先」を増やす


「自立」という言葉には、“なんでも自分でする”“大変なことでも自分で解決する”というニュアンスが含まれているように考えがちです。


そう考えると「自立」と「依存」は相反する立場なような気がします。しかし、実は「依存先」を増やすことがかえって「自立」につながることになるんですね。


「依存先」を「頼れる場所」と置き換えて考えてみると分かりやすくなるかと思います。


例えば、ご家庭にとって学校しか頼れる場所しかなかったらどうでしょうか。イメージとしては以下の図のようになります。

伸びる矢印は太く一本になります。信頼が強いので一見すると安心感がありますが、万が一学校での生活や人間関係がうまくいかなくなった場合は、一気に「自立」とは遠い世界になります。


一方、次の図はどうでしょうか。

ご家庭から伸びる矢印は細くなりますが、子どもの居場所が複数に増えています。一見、関わりが分散されていきそうですが、子どもたちの居場所が増える分、たとえ一つの場所での生活がダメになったとしても他の場所で支えられることが多々あり、結局はこれが「自立」につながる状態だということです。


ここで、先ほどの熊谷さんの「家族をめぐる言葉」というエッセイより一部引用して紹介します。


 最初、赤ちゃんの依存先は親しかありません。赤ちゃんから親に太い矢印が向かいます。親なしでは生きていられない状態ですね。しかし、成長とともにできることが増えていきます。親以外のものにどんどん頼れるようになっていく。友だちとか、先生とか、商店街のおじさんとか、人間だけでなく、いろいろな道具や社会制度を使うようにもなります。依存先が増えることで、親への矢印がどんどん細くなります。依存できるものをどんどん開拓し、増やしていくことで自立していくのです。親への矢印が細くなり、依存先が増えれば、より生き方の選択肢が増え、自由になります。そのようにして、子どもは成長していくわけです。
 最近は、親も依存先が少ないのではないでしょうか。子どもだけでなく、支える側の親も依存できる先が少ないから、子どもから離れられない。親自ら、弱さをさらけだし、人に頼り、支援をお願いすること。その姿を通して、子どもも困ったときは助けを求めていいのだと学びます。他人に迷惑を掛けてはいけないという発想が中心で、自分で何とかしようとし過ぎると、依存先が減っていきます。これでは、結果的に、自立が妨げられてしまうのです。

『家族をめぐる言葉』熊谷晋一郎



私たちは各ご家庭の「依存先」でありたい


この考え方を知った時に私が考えたのは、「きりんアフタースクールが各ご家庭にとって必要な依存先」になれているだろうかということでした。


なんでもかんでも請け負うという意味ではなく、心理的に「きりんアフタースクールがあるから我が子(=我が家)は安心」という状況を作れているかという自問自答です。


まだまだできることはありそうです。


今年も子どもたちに真摯に向き合いながら、各ご家庭とのコミュニケーションを大事にしていきたいと思います。




引き続き、きりんアフタースクールをよろしくお願いいたします。

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